女官

女官 明治宮中出仕の記 (講談社学術文庫)

女官 明治宮中出仕の記 (講談社学術文庫)

明治天皇と皇后に仕えた女官の実録です。女官なので明治天皇の時代の、いわゆる「大奥」での暮らしの体験談です。ただ、18歳で就職(でいいのかな?)して23歳で皇太后崩御に伴う人員整理で退職しているそうなのでわずか5年、明治天皇が生きていたのはそのうち半分くらいの期間なのでかなり短いです。まあ、戦後じゃないと回顧録もなかなか出せなかったので年齢的にはベテランじゃなくても仕方ないでしょう。
貴重な証言だと思いますけど、結構割り引くところがあるんじゃないかなと感じました。大正天皇貞明皇后への批判的な意見なんかは特に。解説では著者よりでしたけど、私なんか意地が悪いので、この方「天皇の寵姫」に未練があるから夫が興味を持った女性を嫌がっていた貞明皇后に悪意があるんじゃないの?って思いました。もちろん、これは大正天皇が好きだったとか夫への気持ちが嘘だったというのは別の話で、仕事の一環と思えば、例えばサラリーマンが若い時に一時期自分と仲良くしていた上司or先輩が社長とかになってあの時うまく立ち回っていたら今頃社長のお気に入りとして出世していたなあ、今取り巻きになっている同僚がいるように自分にだってチャンスはあったんだ…みたいな感じですかね。
まあ、間違った情報が流れている例として、女官仲間が後にメディアで「美人だった」って書かれたのを実際は美人じゃなかったって本人自身の謙遜ならともかく同僚という立場で苦情を言えない死者に書いちゃう著者もなかなか意地が悪いですよ。
しかし、女官ってかなり少なかったんだなあという印象です。そりゃあ、お手付きの女官が皇太子の生母までも悠々自適じゃなく女官として仕事しないといけなかったのもわかります。江戸時代は天皇相手といえど公家の娘に汚れ仕事をさせられないって地下人(無位無官やお目見え以下のことで本当の意味の「庶民」ではない)の娘を雇っていたからその頃の方がある意味楽だったんじゃないでしょうか。