源氏物語の時代

源氏物語の時代―一条天皇と后たちのものがたり (朝日選書 820)

源氏物語の時代―一条天皇と后たちのものがたり (朝日選書 820)

定子と彰子の違いは母親の出身階級による育て方の違いという着眼点はすごくいいと思います。一般論として母系の文化の方が伝わりやすいという研究もありますしね。一条天皇が漢文好きとか面白かったです。
ただ倫子母娘に関して。一条天皇道長邸を訪問した時、倫子の子どもと明子(道長の二番目の妻)の子どもが舞を披露したら明子の子どもがとても上手だったので、感心した一条天皇が褒美を出したところ、道長始め周りの皆もよかったモードだったのに倫子だけが不機嫌になって退席してしまい、場の空気は盛り下がったというエピソードがあります。この辺りを一条天皇が笛を吹いても「笛は聞くもので見るものではない」とそっぽ向いていた彰子のエピソードと絡めて、お嬢様育ちのKYさとかに持っていくとかして欲しかったです。この本は客観的・学術的に書こうという雰囲気があるので、こういうのが抜けていると倫子・彰子母娘を良く描こうという結論ありきで内容を取捨選択して読者をミスリードしているように感じちゃいます。
定子側から一条天皇前半を描いた作品はたくさんあるので、彰子側から一条天皇後半を描いている点では貴重だと思います。